『本陣殺人事件』

本陣殺人事件 (角川文庫)

【江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。
その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。
離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。
枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、
一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた・・・。
アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場作品となる表題作ほか、
「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の二編を収録。】

金田一耕助シリーズの最初の作品です。
横溝さんが海外の本格推理小説に強い影響を受けているのが、
作中からもわかります。
そして、日本でもその素晴らしい作品を作り、それを超えようという
彼の強い意思が伝わってきました。
古典作品ですから、トリックや作品の「落ち」も特に斬新なものは
期待していませんでしたが、さすが横溝作品!!現代にも通じる
見事な内容になっていました。

横溝作品の長編にありがちな複雑な人間相関図も、短編なので
すっきりまとめられて、かといって軽くならず、内容がぎゅっと凝縮されて
いる感じがしました。初期の作品の傑作なんでしょうね。

入っている三篇には、「密室トリック」「顔のない死体トリック」
「一人二役トリック」など、その後の有名長編作品につながっていく
要素も含まれていて、これから読まれる方には、まずこの本から始めることを
オススメします。
思いっきり逆走している私から言うのもなんですが・・・（´▽｀；）