『ステラの遺産』

ステラの遺産 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ステラの遺産 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

【ジュネヴィーヴは、老人ホームのケア・アシスタント。
彼女の受けもちのひとり、ステラは癌で余命いくばくも
ない老女である。
ある日、ステラ宛てに彼女名義の家の権利書が届く。
ステラはその家の存在を子供にまでひた隠しにしていたのだが、
その理由を話すため、ジュネヴィーヴだけに自分の過去を
打ち明けるようになる。
結婚に満足できなかったこと、不倫をしていたことなどなど。
そしてその話は必ず秘密の家に収斂していく。
その家でいったい何があったのか?
ジュネヴィーヴは、やがて恐ろしい疑念に捕らわれていく・・・。】


ルース・レンデルの別名義、バーバラ・ヴァインの作品です。
レンデル作品では、狂気の世界やハラハラの心理描写が魅力の一つ
ですが、ヴァインの作品では女性の心情を細かく丁寧に綴った
作品と書き分けているように思います。


一人称で語られていくステラの過去と、その話を聞くジュネヴィーヴ。
時代背景は違えど、いつの時代にもある女性の感じるむなしさや、
切なさが交差しながら語られていきます。


そしてジュネヴィーヴは、ひた隠しにされていたステラの
過去を知ることになるのです。
ラストで結ばれるステラとジュネヴィーヴの運命は、さすがと
うなりました。