『蔵の中・鬼火』

【どんよりと澱んだほこりっぽい空気、小さな窓から差し込む乏しい光線が

作る乱雑に積み重ねられた箪笥や長持ちの仄暗い陰。
蔵の中は、昔姉と遊んだ頃と少しも変っていない。胸を病んでいた美しい姉は、
四年前、私の眼の前で激しい喀血をした直後、この世を去った。
一人では何をしていても物憂く、味気ない蔵の中。
ふと私は、古い遠眼鏡を持ちだして、こっそりと窓から外の世界をのぞいてみることにした。
だが、これがあの恐ろしい事件に私を引き込むきっかけになろうは……。 】


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